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三村美衣
(みむらみい)

書評家。雑誌「活字倶楽部」、「SFマガジン」、産経新聞などで書評連載中。趣味は仕掛け絵本の蒐集。


4月12日(火)S5#12『人形の館』

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■美しい死体
アトランティックシティで立て続けに二人の女性の遺体が発見された。一人目は公園で発見されたステイシア・ジャクソン。二人目は遊園地のメリーゴーランドに乗せられていたリタ・スチュワート。ステイシアは黒人で弁護士。リタは金髪でウエートレス。二人とも小柄だという以外に、被害者に共通点はない。レイプも暴力の痕跡もないが、脳から筋肉への信号を遮断する薬物が検出された。失踪した2ヶ月前から、意識があるが身体が動かせない状態で監禁されていたと見られる。点滴で栄養を与えられていたが、ステイシアは脳内出血、リタは脳卒中で死亡した。また、遺体はきれいで、爪にはネイルがほどこされ、まるで被害者のためにあつらえたようにフィットしたシフォンのクラシカルなドレスを着せられていた。被害者が小柄であることとその扱い方から、BAUは犯人は女性である可能性が高いと判断する。
■被害者の共通点は……
遊園地に足を運んだロッシとホッチは、犯人はワゴン車かSUV車と車椅子を使って遺体を運んだと推測する。一方検死官に会ったリードは、被害者が女性ひとりでも充分に抱きかかえて運べるくらい華奢なこと、被害者はショックから髪が抜け、死亡する前に付け毛がつけられていたなどの情報を得た。また被害者の家族によると、二人とも服を買うのが好きで、小柄なためにサイズ直しに出していたという。ブティックもリフォーム店も重複しないが、下請けが同じ可能性がある。他にも拉致されている被害者がいないか調査していたガルシアは、ステイシアとリタの遺体が発見された前の日に失踪した、小柄な女性が二人いることを発見する。なんと二人はステイシアとリタにそっくりのタイプの女性だった。犯人は代わりを確保してから、前の女性を遺棄しているのだ。やがて新たな被害者が発見された。遺体を手放したということは、代わりの人間を確保したに違いない。そう考えたチームは48時間以内の失踪者をチェックし、ベサニー・ウォレスという女性が拉致されたことを掴んだ。ベサニーの夫によると、彼女は糖尿病を患っており、24時間以内に見つけないと生命に関わるという。
■犯人はコレクターだ
プロファイルがまとまった。「犯人は女性。コレクターと呼ばれる精神疾患を抱えている。物質に執着する病気で、反社会的だったり極端に内向的な人物だ。空想と現実をうまく識別できず、生きた人間と死体の区別や、持っている物となくした物の区別はできないが、車を運転したりといったことは出来るし、針仕事のような目的の明確な仕事には秀でている。犯人は人形を集めているつもりだ。この3ヶ月で本物の人形を失い、心に大きなストレスを抱え、できるだけ人形に近いものを集めた。薬で被害者から身体の自由を奪い、失った人形のかわりに愛でているのだ。犯人に暴力的な意図はなく、殺人は身体の自由を奪ったことが引き起こした副作用である。犯人はコレクションを完成することで、人生に対する自信を取り戻そうとしている。犯人はひとりで働き、医療の訓練を受けている。現在は縫製関係の仕事についている」
■「サリーは電気の部屋が嫌い」
ステイシアが通っていたブティックに足を運んだJJは、遺体がまとっていたドレスの縫い目に、特殊で緻密な技法が使われていることを教えられる。一方、ドールショップを尋ねたリードとモーガンは、80年代後半にこの地域にあったヴァロワ社が作った人形のシリーズと、被害者のタイプが似通っていることを突き止めた。そのヴァロワ社は、かつて人形の手作りドレスのコンテストを開催していたが、ドレスと一緒に提出された作文から、児童虐待を匂わせる内容が散見されて、コンテストを中止したという。ドレスと作文は警察に提出された。警察に保管されていたそれらをチェックしたBAUは、やがてステッチの特徴と「サリーは電気の部屋が嫌い」という作文からサマンサ・マルコムという少女に行き当たった。サマンサは未成年専門の精神療養施設を経営する父親から、電気ショック療法を受け、さらに最近まで大量の抗精神病薬を投与されていた。父親のマルコム博士に面会したリードは、部屋に飾られていた玩具から、彼が娘のサマンサをはじめ患者に性的虐待を働いていたことを暴き、それを取引材料にサマンサの居所を聞き出した。サマンサの家に駆けつけたリードは、マルコム博士が取り上げた人形をサマンサに渡すことで、拉致された女性だけではなく、犯人のサマンサも無事に保護したのだった。

【格言】
「必要なくなったものを捨てられないのは、そのモノに所有されているということだ。物質主義の現代社会において、多くの人間が所有物に所有されてる」マルドレッド・リセット・ノーマン(1908年7月18日-1981年7月7日) の言葉。「Peace Pilgirm(平和巡礼者)」と名乗り、1953年から1981年まで、平和を希求するメッセージを伝えるために、身一つで、どの組織に所属することなくアメリカ大陸を歩きつづけた。
「人生はチェスと違って、チェックメイトの後もゲームはつづく」アメリカのSF作家アイザック・アシモフ(1920年1月2日-1992年4月6日)の言葉。アシモフはリードのお父さんが好きで、初版本を蒐集している作家だ。引用は『ミクロの決死圏2』の中の記述。物語は、科学者を乗り物に乗せて乗り物ごとミクロ化し、人間の脳内血管内に送り込むという科学冒険もの。作中のロシア人(ソ連ですが)科学者のデジニョーフが、「父親の口癖だが」と前置きして、格言めいたものを披露する。その先代デジニョーフ格言は、各章の冒頭にも引用されており、これもその中のひとつ。チェスに関する格言には「ポーンはチェス盤の上で一番重要な駒だ――ポーンにとっては」(浅倉久志訳/早川書房刊)みたいな、シニカルなものもある。アシモフは、『われはロボット』や『鋼鉄都市』などロボットの進化、人間との共存などを扱ったSF作品でも有名。
【不気味の谷】
原題のThe Uncanny Valleyとは、「不気味の谷」の意。これは、日本のロボット工学者で森政弘が1970年に提唱した概念で、ロボットが人間らしくなればなるほど、人間はロボットに対して親近感を抱くが、ある時点でそれが反転、不気味さを感じるようになるが、さらに見分けがつかなくなった地点で、再びその感情が親近感の方向に逆転する。つまり中途半端に人間に近づいた領域で、不気味さにつながるという主張。
【ゲストスター】
ドクター・マルコムを演じているのは、俳優で映画監督のジョナサン・フレイクス。「新スタートレック:ザ・ネクスト・ジェネレーション」の監督並びにライカー副長の役で知られる。今回のエピソードの中で、ガルシアが子供の頃に電気ショック療法を受けたサマンサのことを「この人、ホントかわいそう。まるで、エミリー・ブロンテみたい、というかシェイクスピアみたい、というか『スタートレック』の下っ端乗組員みたい」と語る。「下っ端乗り組み員」の部分の原語は「赤いシャツ」。「スタートレック」のオリジナル・シリーズの赤ユニは保安部。下っ端、使い捨ての登場人物が多かったことに由来する台詞だ。「新スタートレック」は時代が異なるために、赤は司令部門の色となっており、ジョナサン・フレイクス演じるライカー副長のユニフォームも赤だった。
【ジニーン・ジョーンズ】
1950年7月13日、テキサス生まれの看護婦。1971年から1984年にかけ、人の生き死にを左右できるという支配力を味わうために、乳幼児に筋弛緩剤を注射して殺した。その数は50人にものぼると考えられている。
【チェスとギデオン】
今回、アバンとエピローグの公園でのチェス・シーンで、久々にギデオンの話題がでたのが、ファンにはなんとも嬉しい。冒頭ではチェスはバリエーションにすぎず、「だから彼はやめたんだと思う。同じパターンに厭きて他の結果を見たくなったんじゃないかな」と語っていたリード。しかし今回の、被害者を救うだけではなく、犯罪者を理解しようとする姿勢は、ギデオンを髣髴とさせる。そしてエピローグで再びチェスに戻ってきたリード。ギデオンを、そして彼がなぜ去ったのか。リードは今も考えつづけているんですね。

2011.4.12|エピソード・ガイド|コメント(3)トラックバック(0)

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コメント

今回のリードはとても素敵でした(まあ、いつも素敵だけど)
犯人に語りかけるシーンはとても印象的でした。
リードにとって、ギデオンは特別な存在なんですね。

投稿: SESAME | 2011年4月13日 (水) 10時36分

eyeギデオンとロッシの競演が一度見たい。

投稿: junior | 2011年4月13日 (水) 21時02分

リード大活躍でしたね。サマンサに寄り添うリードは優しさに溢れていて素敵でした。サマンサもある意味被害者ですよね。
リードとチェスをしていた少年は以前に出てきましたか?

投稿: ろん | 2011年4月13日 (水) 22時09分

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