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三村美衣
(みむらみい)

書評家。雑誌「活字倶楽部」、「SFマガジン」、産経新聞などで書評連載中。趣味は仕掛け絵本の蒐集。

クリミナル・マインド

2月26日(火)S2#8『エンプティ・プラネット』

S28jpg ■爆破予告
 全米の全国規模のニュースネットワークに爆発予告の電話が入った。どの局にかけられた電話もほぼ同じ内容で、「今日の午前中、すべてが始まった場所を走るバスが爆発する」「これは手始めにすぎない、事態が収拾つくまで人々は死につづける」というものだった。国土安全保障省から爆破予告の驚異査定を依頼されたBAUは、電話の声から固い決意が感じられると分析しながらも、時間も場所も特定できないのでは、いたずらにパニックを引き起こすだけだと考え、報道を見合わせるよう指示する。
 

 やがて予告通り、ワシントン州シアトルでバスが爆破され、乗客のひとりと運転手が死亡、7人が負傷した。爆弾を復元したところ、爆薬に矢のささったロボットの絵が刻まれていたことが判明する。その絵柄から反ロボット主義者、反テクノロジー主義に絞ってワシントン州の犯罪データを洗ったところ、大学近くのネットカフェが爆破された事件が見つかる。ネットカフェの現場から発見された犯行声明文にも、矢のつきささったロボットの絵が添えられていた。
 ギデオンは犯人を釣り上げるために、犯行声明はなかったという偽の情報を流させた。策略は見事に当たり、ホットラインに怒れる犯人からの電話が入った。ギデオンは犯人を巧みに誘導し、「アレグロ」という名前を引き出すことに成功するが、「メッセージはここに置いておく」という言葉の後、電話線の向こうから爆音が響いた。

■犯行の元ネタは一冊のSF小説だった!
 爆破されたのはガソリンスタンド。人的被害はなく、現場には矢の刺さったロボットの絵と、犯人からの分厚い声明が残されていた。声明の中で犯人は、「1週間以内に労働者にとってかわった機械を全て止めろ、さもなくばもっと大きな爆弾を仕掛ける」とさらなる犯行を予告していた。リードは、声明の内容と名前から、この犯罪が一冊の小説を模倣していることに気づく。小説のタイトルは『エンプティ・プラネット』。ロボットに征服された地球をアレグロという少年が救うSF小説だ。
 その後、爆破されたバスの乗客の中に、人工生命の研究者クック博士の名前を発見。彼が『エンプティ・プラネット』の著者ウルスラ・ケント博士の友人であることも判明する。しかしBAUの警告と護衛を尊大な態度で拒絶した博士は、自動車に仕掛けられた爆弾で命を落とした。その後、浄水場や郵便局や図書館から相次いで爆弾発見の連絡が入り、ホッチとモーガンは爆弾処理に奔走する。
 一方、ギデオンとリードは大学のウルスラ・ケント博士を訪問。彼女はロボットのネックレスを身につけており、もはや事件との関連は疑う余地はないが、自分の生徒にテクノロジーを憎むような人物はいないと疑惑を一蹴する。しかしその後、クック博士が彼女の授業のゲスト講師であったこと、講師はもう一人いたことが判明する。ホッチとモーガンはその講師の元に急行する。ブレイジャー博士はまさに車で出かけようというところだった。間一髪、車を停止させることには成功したものの、席をたつと車は爆発するため彼女を車から降ろすことができない。モーガンはホッチの制止も振り切り、爆弾処理の間、ずっと博士の傍らで手を握って励ます。その報告を受けたギデオンはウルスラにむかい、事件解決に命を賭けている若者がいるのだから、あなたももっと捜査に協力するべきだと迫る。

■母の贖罪
 爆弾も無事に解体され、FBI支局に戻った一同。リードから物語が、母親殺しによって締めくくられると聞いたギデオンは、犯人の狙いがウルスラを殺して物語を完遂することだと推理する。まさにその頃、大学のオフィスでウルスラは、犯人ケネス・ロバーツと対峙していた。彼女は声明の文面から犯人が、自分の教え子であるケネスだと気づきながら庇っていたのだ。問いただすウルスラに、身勝手な思いを語るケネス。養子だった彼は、子供を養子に出した経験のあるウルスラを実母だと思いこんだのだ。しかし、再会を夢見て大学に入学したものの、彼女はいっこうに自分に気づかない。ついに業を煮やした彼は、アレグロのように行動することで想いを遂げようとしたのだ。ウルスラは、自分が手放したのは娘であり、あなたの母ではないと諭すが、ケネスの暴走は止まらない。爆弾を振りかざす彼にSWATが銃を向ける。しかし銃弾に倒れたのはケネスではなく、ウルスラだった。狙撃に気づいた彼女が、火線に割って入ったのだ。駆け寄る捜査陣にケネスは取り押さえられる。幸いにも一命を取り留めたウルスラ、彼女はなおもケネスを庇う言葉を口にするのだった。

【格言】
「欲望のため、悪は善を惨殺する。善は持てる力のすべてを尽くして、悪の試みに抵抗する」
マクシミリアン・フランソワ・マリー・イジドール・ド・ロベスピエール(1758~1794)の言葉。フランス革命期の極左組織であるジャコバン派の政治家。反対するものを次々に処刑台に送り、恐怖政治を断行。1794年7月に起きたテルミドールのクーデターで失脚、自らも断頭台に消えた。

【1分間に2万語】
 リードの天才ぶりを数量で表すのに使われる、1分間に2万語を読めるというやつ。2万語と言われても、日本は単語で数える習慣がないので、いまいちぴんとこない。そこで実際に手元にある英語の本の単語数を数えてみた。手元にあったのがヤングアダルトのペーパーバックなのでちょっと単語数は少なめかもしれないが、1ページの行数は31行。 a やit といった短いものから、opportunityやpersonificationsみたいな長ったらしい単語まであるが、各行の単語数はだいたい9~11ワード。つまり1ページの単語数は約300。2万語を60秒で割ると333語。つまりリードは1秒でペーパーバック1ページ、1分で60ページ読めるということ。「エンプティ・プラネット」は単行本サイズなので、1秒1ページとはいかないかもしれないが、10分もあれば大抵の本は読み終わるだろう。

【エンプティ・プラネット】
 ウルスラ・ケントがデビッド・ハンズリー名義で執筆したSF小説『エンプティ・プラネット』。ウルスラという名前は『ゲド戦記』のル・グウィンを連想させるが、まったくの架空作品。その内容でわかっているのは、ロボットが人類と繁殖する方法を見いだし、世界がロボットによって征服された未来。父親を自殺で失った12歳の少年アレグロは、人間の軍隊を組織し、反ロボット戦争を開始。その過程で自分が養子であることを知った彼は、やがて実の母親と再会する。しかし母は既に人間ではなくロボットになっており、アレグロの手にかかって命を失う。しかしその死は母にとっては息子への贖罪であり、一方のアレグロも、ロボットに対抗する力を自分に与えてくれた母に感謝。やがて彼はロボットを倒し、新しい人間の世界を切り開く。そんなアレグロの様子を天国から、母親が優しく見守っているというもの。
 ここから先は私のオリジナリティのない妄想だが、アレグロの実の両親こそが人間と繁殖する方法を発見したロボットを制作した科学者だったのではないだろうか。彼らは自分たちの行いに恐怖し、ロボットに対抗する力を息子に授けて、その息子をロボットの知られない場所に養子にだした。その後、両親はロボットに対抗しようとするも、ロボットに殺されてしまう。ところが繁殖方法を見つけたロボットはアレグロの母親を、自分の母か恋人のように思っていて、その精神をロボットの中に閉じこめたのだ。つまり母を殺すことは、母を永遠の苦しみから解放することにもなるのだ。ってまるっきり『新造人間キャシャーン』ですね(笑)。もうひとつ思いついたのは、母親にはロボットを従わせる特殊な力があってそれをロボット皇帝に見込まれて……、というダース・ヴェイダーを母に見立てた『スター・ウォーズ』パターンでした。

【ダグラスとオルシェイカー】
 リードがプロファイリングのテロリストの分類のときに引き合いに出すこの名前。元FBI捜査官で、最初のプロファイラーであるジョン・ダグラスと、マーク・オルシェイカーのこと。共著で『幼児殺人の快楽心理 -FBI心理分析官ファイル』(徳間書店)、『FBIマインドハンター -セックス殺人捜査の現場から』(早川書房)などの書籍を執筆している。

【コミケ】
 エピローグの飛行機の中でJJがお断り宣言をした「コミケ」だが、原語は「コミコン」。コミック、SFX映画からTV番組まで、幅広くポップカルチャーを扱うコンベンションで、サンディエゴで毎年開かれるコミコンは、延べで30万人を集めるビックイベント。ただ、確かにコミコンにもSFファンは行くけど、SFファンが本当に集まるのは、ワールド・サイエンス・フィクション・コンベンション略してワールドコンの方だ(よってリードに言って欲しかったなあ)。

2008.2.26|エピソード・ガイド|コメント(3)トラックバック(0)

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コメント

爆弾bombは不特定多数の人が巻き込まれるので、バスが爆破されたシーンは恐ろしかったです
モーガンとガルシアの電話での会話が一番好きで、毎回癒されてますconfidentモーガンは本当に優しいですねlovely今回はチョーsign03カッコ良かったです。

投稿: ゆぅ | 2008年2月28日 (木) 16時13分

思い込みですよね、怖いですね。
手放した子供が女の子って聞かされても理解できないでしょうね。
モーガンは勇気がありますね。
博士もすごく救われたはずですし。
発信源追跡(でしたっけ?)の許可をガルシアが魅力で得たと答えた時のホッチナーの少し緩んだ口元がよかった。
さすがガルシアですね。

投稿: Mirai | 2008年3月 1日 (土) 10時26分

犯人は強がり言いながら、最後までお母さんに抱締められる夢を見てたんだろうな。悲しいことです。
彼にとっては教授に声をかけるより爆弾魔になる方が簡単だったなんてね。

投稿: グッドラック | 2008年3月 4日 (火) 17時03分

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